「スタートアップ・ポーカー」で勝つ方法とは?
まず「スタートアップ(=起業)・ポーカー」は、世間一般で言うポーカーゲームではないことをご了承ください。なので、今からご説明することは、プロのギャンブラーでなくても何の問題もなく理解できるはずです。この唯一無二のスタートアップ・ポーカーの解説では、テキサス・ホールデムを例に用います。
各参加者はプレイするためにアンティを払わなければなりません。低レートのゲームなので、アンティは100円としましょう。それが、革新的なプロジェクトを立ち上げるためのコストということになるわけです。各参加者には2枚のカードが配られますが、その内1枚は誰にも見られないように伏せたままにしておきます。これらのカードは、各企業がゲーム開始前から持っている「固有の能力」と「ビジネス戦略」と言うことができます。
良い手札で大勝負
ジャックポットを狙って、勝負に挑みます。ゲームが徐々に進行していく過程は、「ウォーターフォール・モデル」に似ています。マーケットのカードを1枚たりとも見ていなくても、誰もが自らのカードを信じて疑わないのです。推進中のビジネスモデルや保持しているスキル、つまり、喩えるならジャックのワンペアに、信頼を置かずしてどうするといった感じです。このペアは、客観的に見ても強い手札です。ほぼ必勝と思われる賭けを行ったので、後は勝ち金が確定するまでゆっくりと軽食カウンターでも物色したい気分になります。
ところが、その後マーケットは味方してくれませんでした。対戦相手の手札は、当初は2と4でしたが、マーケットから3と5と6を得られたので、最終的には2から6のストレートになったのです!弱かったはずの相手の手札が、マーケットを利用したことで、強い手札へと変貌し、自分は勝負に負けてしまったのです。
こんなふうに資金を失ってしまった夜は、隅に座って生ぬるいビールを飲み、ピーナッツを食べながら、他の参加者たちがゲームに興じているのをただ眺めているしかありません。これが、途中の仕様変更に対して柔軟に対応できない「ウォーターフォール・モデル」のデメリットなのです!!
情報の価値
自分以外の参加者全員が次のカードを覗き見していたとしたら、1人で非常に不利なゲームをプレイすることになりますよね。これは、言わば、他の参加者たちは、かなり明確な状況把握が出来ているので、すでにもうチェスの勝負に移行しているのに、自分1人だけが、まだ全員でポーカーをプレイしていると信じ込んでいるようなものなのです。
確かに、実際には他の参加者たちもお互い伏せたカードは見えておらず、全面的かつ詳細な状況把握が出来ているわけではありません。しかし、それでも次に配られるカードを知っている参加者たちは、知らない参加者よりもずっと多くを把握していることになります。
それでは、自らの手札の強弱に関わらず、対価を支払ってでも次のカードの覗き見をするべきでしょうか?それは言うまでもなく、対価次第です!
戦略の変更
現実の世界では、スタートアップ起業が配られたカードに縛られることはありません。企業の在り様やビジネスモデルに何か不具合や不備があれば、戦略を変更することはある程度の範囲で可能なのです。
ハートの2とスペードの2のワンペアが最初の手札だったとします。300円で3枚のカードを覗き見出来るとしましょう。さて、ハートの3、4、5が見えました。
これは、スペードの2を交換し、フラッシュかストレートまたはストレートフラッシュを狙うべきチャンスなのかもしれません。
マーケットの過密化
最後に、自らのビジネスにおける競争相手について考えてみてください。参加者が少ないゲームでプレイすることには大きな魅力があるかもしれません。とは言え、心に留めておかなければならないことがあります。利益は競争相手の数ではなく、マーケットによって決定されるという事実です。さて、プレイヤーは、スタートアップポーカーゲームにいつでも参加できます。これは、既に参加しているプレイヤーにとっては残念なことに違いありません。